本番を終えて

お早うございます。

 

今日は11月5日、時間は4時です。

数か月前は、この時間でも外は白んでいましたが、今日はまだ漆黒の闇です。

今日の日の出の時間は6時過ぎですからね。

太陽の出ている時間が短くなりましたね。

今年も、あと2か月ですね。

1年が過ぎるのが、とても早く感じるようになりました。

私も漫65歳になりました。

名実ともに高齢者となりました。

何故か淋しさを感じます。私の心の中に高齢者という言葉に抵抗したいという思いがあるのかも知れませんね。

素直に高齢者を認められるには、まだ時間が掛かりそうです。

 

さて、先週の日曜日に私の所属している劇団(それこそ高齢者だけで運営している劇団です)が、公演を行いました。

わずか15分程度の演目でしたので、観覧頂いたお客様から、「随分、短い演目だったね」という声を頂きました。

お借りした劇場の都合で、文字時間が30分以内の演目という縛りがあったので、やむを得なかったのですが、観覧された方には物足りなかったかもしれませんね。

 

以前も書いた覚えがあるのですが、コロナが流行する前にも、この劇団に所属しておりまして、演劇を楽しんでおりました。

そうは言っても、演出をお願いしている方はプロとしても活躍をされている方ですので、指導は結構、厳しいものがあります。

団員は、15名ほどいたのですが、コロナの影響や高齢化で、この公演の時は7名でした。

そのうち男性は3名です。

 

私は、コロナが流行し始めた時に、活動を辞退したのです。

理由は、時間の都合で活動に参加出来なくなったからでした。

劇団の稽古日は土曜日の午後なんですが、当時、私は土曜日の午後も業務を行わなければならなくなってしまったのです。

丁度、定年を迎えて会社からも雇用延長契約を解除されたので、別の仕事を探すことになり、土曜日もお仕事になってしまったのです。

 

劇団もコロナの影響で活動拠点から、稽古場を貸してもらえなくなり、約2年は活動が休止になっていたので、ちょうど良かったのですが、演劇が出来なかった時期は寂しいと感じた事もありました。

 

ですが、今年の3月に劇団から電話を貰いまして、復帰することになったのですが、その経緯がちょっと面白かったのでご紹介します。

3月の日曜日でした。

日曜日は、妻はアルバイトに出掛けていますので、私が一人で留守番をしているのです。(昨年までは愛犬と一緒に留守番をしていたのですが、今年の2月に他界してしまったので、全くの一人となってしまったのです)

時間は午後の3時過ぎだったと思いますが、自宅の電話に着信があり、滅多に活動しないオブジェとなっている電話が、嬉しそうに響きだしました。

しかし、このご時世ですから、昔のように電話が鳴ったからといって、すぐに出る事はしませんでした。

数回、呼び出し音が鳴り、留守番電話に切り替わるのです。

たまたま、その時は電話のそばに居たので、どこから電話なんだろうと思い、暫く電話の前に立っていました。

すると、もごもごと電話を掛けた方が話を始めたのです。「以前、所属して頂いた劇団の者ですが、如何お過ごしですか。コロナもだいぶ落ち着いてきたので、劇団の活動を本格的に始めようと思っています。もし、時間に都合がつくようでしたら、一緒にやりませんか。秋以降に公演の予定もあるので、是非、参加して頂きたい」という声が聞こえたのです。

私は、ためらわずに受話器を上げました。

「こんにちは。ご無沙汰しています。」

そして、近状報告をお互いにして、劇団に戻って欲しいと誘われました。

私は了解しました。とても嬉しかったのです。

先ほども書いたように、高齢者が運営している劇団ですから、このコロナで解散してしまったと思っていたのですが、地道に稽古を重ねていたようでした。

 

4月になって稽古に参加したのですが、3年のブランクを感じないように、団員が暖かく迎えてくれて、すぐにみんなと打ち解けることが出来ました。

そして、今回の公演に併せた稽古が始まったのです。

 

そして、稽古を重ね公演前日の土曜日にゲネプロを行うべく、本番の舞台に立ったのですが、やっちまいました。久々の舞台稽古だったので、すっかり舞い上がってしまい、ゲネとはいえ、台詞がすっ飛んでしまったのです。

 

土曜日、他の団員は午前中から稽古場で立稽古をしていたのですが、私は所用があり午前中の稽古に参加できず、午後に直接劇場の楽屋に入りました。

時間が無いので、すぐに衣装に着替え、舞台へ向かいました。

舞台では大まかな立ち位置の確認と、段取りを説明され、すぐにゲネプロ(リハーサルです)が始まりました。

客席にお客様はいませんが、演出と主催者のお偉いさんが座って、芝居の内容を確認するのです。(むしろ、本番より緊張する状況です)

音楽が流れ芝居は始まりました。舞台にライトが灯され、主役を演じる演者が第一声を放ちます。

芝居は着々と進行していき、いよいよ、私の出番です。

私の役は、油問屋の大旦那の役で、高齢な役です。

杖を突きよたよたと歩くのですが、頭だけはしっかりしているという役なので、言葉ははっきりと言うのですが、体はよたよたとしなければならないのです。

最初の出番は無事に終了したのですが、終盤の出番で肝心な台詞を飛ばしてしまい、劇が進行出来なくなってしまったのです。

その台詞がないと、場が進まないという重要な台詞だったのです。

その前の台詞は出て、演技もしっかり出来たのですが、なんとその後の台詞をすっかり忘れてしまい、黙ってしまったのです。

そばに居た役者から、ぼそぼそと台詞を言われ、慌てて演技をしたのですが、演出は厳しい目で私を見つめていました。本番の客席は証明が暗くなっているので、観客の顔を見えませんが、ゲネプロの時(今回は)照明が明るくされていたので、演出の顔が見えました。

隣に主催者が居たので、怒鳴りはしませんでしたが、後で厳しい嫌味を言われました。

 

ゲネプロとはいえ、台詞を飛ばすなんてことはとんでもないミスです。特に舞台芝居は一発勝負ですから、絶対にあってはならないミスなのです。

もう、冷や汗ものでした。

 

私はその後、台本を読み直し台詞の確認をしました。

本番ではミスは許されません。

久々の舞台と言うのもあって、舞い上がっていたのでしょう。

 

翌日、本番は15時30分からでしたが、我々は13時に楽屋入りして衣装に着替えて、軽く通し稽古を行いました。

当然、舞台は使えませんから、広めの控室を借りて、通しで台詞合わせをする程度でしたが、この稽古はとても重要でした。

この稽古をしたおかげで、本番に臨むための心に余裕ができました。

 

さあ、本番です。各自が舞台袖にスタンバイできました。

スタッフから、「本番5分前です。」と声を掛けられました。

本番開始時間になり、スタッフが観客に演目の紹介を行い、本番スタートのブザーが鳴り、客席の照明が暗くなります。

音楽が流れ、語りが第一声を始めます。

さあ、本番です。

もう、待ったなしです。

この時の緊張感と本番終了時の舞台での観客への挨拶は、何度やっても嬉しいものです。

特に、演目が終わって舞台から観客へ挨拶をするときは、全てをやりきったという気持ちで、全身が満足しています。

この感覚を体験してしまうと、またあの高揚感を味わいたいという思いが体中を駆け回ります。

 

貧乏をしながら、芝居をやり続ける人は、いつか有名になる事、金持ちになる事も夢見るのでしょうが、その前にこの舞台の充実感が忘れられないのかもしれませんね。

 

また、薔薇を描きました。色の使い方を間違ってしまい、絵全体が暗くなってしまいました。